23000円超まで上昇した今回の局面、多くの投資家に恩恵がと思ったら違うようだ。信用評価損率と日経平均を比較すると、直近で最も評価損が低い時点は3/10の週で-5.2%。この時の日経平均は19500円辺り。現状は-10~-7%を行ったり来たりだが日経平均は23000円前後。日経平均の上昇ほどに個別株は上昇していないことが伺える。「指数は高いけど持っている株はそれほど上昇している実感がない」、こう言う現実に加え、押し目待ちしている向きには期待したほどの値幅調整が少なく買うに買えない。何ともやりきれない株価水準も買うべきか売るべきか判断を迷わせる一因だ。
さらにテクニカル。日経平均の9週サイコロやRSIは11月第2週にこれ以上ない100%を示現したあとジワリ低下中だが80~90%と調整一巡というレベルまで低下していない。
相場のリズムを示すRCIも同じ。週足テクニカルでは買い難いのだ。
外部要因に懸念するアナリスト・評論家の声に揺れる投資家。
投資をしていれば色々な情報が入ってくる。買いとか売りとかの理由だ。今の懸念材料を挙げると、北朝鮮の核問題、トランプ大統領の発言や政策など、中国バブル崩壊、世界的な金融引き締め方向の影響などだ。
確かに中国バブル崩壊の影響は計り知れない。例えば2015夏に中国は人民元切り下げを実行、円高が進み日経平均は20952円から翌年2月に14865円、6月に14864円まで下げた。上海株はさらに大きく下げ6月高値5178ポイント→8月に2850を。2016年1月には半値の2638ポイントまでの大幅調整となった。
だが当時の上海株は2014年初2000ポイントだった株価が、1年半で2.5倍に達する5178ポイントまでの急騰を演じた後の大幅調整だったのに対して、2017年初の上海株は3000ポイントが直近3300ポイント前後の小幅高状態。米国を先頭に史上最高値を更新する株式市場が珍しくもない昨今、僅か10%の年間上昇率では暴落する「幅」を持ち合わせていない上海市場を危惧するのは懸念しすぎと考え、中国発の株安要因は少なくとも上海株の暴落が引き金とはならないと考える。
チャートで上記のポイントを確認してみる。
日経平均は2016年6月安値14864円→本年11月高値23382円まで57.3%上昇。人民元切り下げで日本株が調整した直前の高値が2015年6月20952円で、上昇の起点は2014年4月安値13885円で50.9%の上昇。上昇期間も前回が1年2ヶ月で今回が1年5ヶ月、上昇率も50.9%・57.3%と調整直前の上昇相場は共に近いものがある。
では日経平均の一株益を溯ってみると、2015年7月に1273円まで伸びたがその後はジリ貧。年末には1222円まで減少。翌年2016年2月の安値近辺では1136円まで減少。さらに5月初には1091円まで減少が進む。1年前の日経平均一株益1273円から182円、14.3%も減ったのだ。2015年~2016年の株価調整はこれを先読みした調整相場だったと言えよう。
補足だが、日経平均の一株益は2016年5月初にボトムを打ちその後は増加に転じるが、日経平均の底入れが6月後半にズレ込んだのは英国のEU離脱の混乱が影響。この時も大幅安の日が買い場となったのはチャートからものちに確認出来るが。
さて日経平均は週足テクニカルの調整一巡感がなく、気になる外部環境が多々あり高値警戒と誰もが思うこの時期。上昇期間や上昇率も前回の調整場面の直前に似ているなど、楽観を言うのは少々のんきと思われるだろう。だが株価の決定要因は結局のところ国の政策と利益だ。 安倍政権はデフレ脱却を目ざし株高継続が基本政策。ならば一株益の増減が日本株の行方を示唆、こう考えれば日々の一株益のチェックは怠れない。
日経新聞を利用して、日経平均÷予想PER=予想一株益。この予想一株益をカレンダーや手帳、エクセルなどで1年分の日付を作成しそこに書き込んでいく。一株益の増減は一目瞭然で日本株の方向も見えてくるはず。
多くのアナリストの予想は2019年3月期も10%前後の利益成長とのようだ。これがマイナスになるような要因、例えば1ドル100円を割る円高などがなければ利益は増加傾向。日本株が大きく調整する要因は一つ消える。こういう地味な作業を繰り返しながら来年の相場に対峙してください。今のところ一株益は増加傾向なのだから基本は押し目買い、この方針を覆す理由は今のところ見あたりません。
今年も1年間お付き合いしていただき有り難うございました。
良い年をお迎え下さい。
高岡隆一